RoAD to the L4 自動運転レベル4等先進モビリティサービス
研究開発・社会実装プロジェクト

未来を築く子どもたちが鍵を握る飯南町の自動運転サービス

2021年10月4日から道の駅「赤来高原」(島根県飯南町)を拠点とした自動運転サービスが始まった。

赤来高原を拠点とした自動運転サービスの車両には、「いーにゃん号」の愛称がつけられた。電磁誘導線を用いたゴルフカートタイプの自動運転サービスで、乗客の定員は4名、走行速度は時速12km以下で走行している。基本運賃は大人200円、定期券は1カ月1000円、回数券は11枚つづりで2000円。運行時間は平日が月曜、火曜、木曜の10時から15時の間、休日は11時から15時の間に運行している。

2021年「住みたい田舎」ベストランキング1位

飯南町には広島県との県境に近い、出雲神話街道(国道54号線)沿いにある。スキー場もあり、冬には平野部でも1mほど積もる。出雲大社に奉納する大しめ縄の制作や、2021年「住みたい田舎」ベストランキングで1位(宝島社「町」ランキング)を獲得したことで、全国的に有名だ。また、出雲街道を利用してサイクリストを呼び込んだり、森林セラピーに力を入れていたりしている。

高齢者の生活圏にある道の駅

道の駅赤来高原は、飯南町役場、Aコープ、赤名保育所、銀行など、岩見銀山街道沿いの高齢者の生活圏の中にある。運行ルートは3ルートあり、生活の移動手段を網羅するようにつくられていて、ゆっくり周遊するコース、スーパーなど商業施設や金融機関があるので日常の用事を短時間に済ませられるルートなどがある。

保育園のそばを通ると、子どもたちが駆け寄ってきてくれた。街道沿いで立ち話をする住民の方も手を振ったり会釈をしてくださったりしたことが思い出だ。また、クルマで通り過ぎると見逃してしまいそうだが、まちの中には神戸川が流れていて、風が吹くと心地よく感じた。

コロナの影響で思うように勧められない

飯南町の自動運転サービスは新型コロナウイルスの影響を大きく受けてしまっていた。なぜなら、まちから感染者がひとりも出ていないからだ。他県のクルマのナンバーを見入ると住民の方は感染を恐れて外に出られないのだという。道の駅は、観光の拠点で、他地域からクルマで来街者がやってくる。そこへ高齢者はなかなか行きづらくなっていた。

道の駅赤来高原駅長の木村和子さんは「サービスが本格的に開始されました。短期間で集客する実証実験とは異なり、無理やり集客しても長続きしません。自動運転を走らせながら徐々に生活に馴染ませていきたい」と思いを語ってくださった。

その他に印象的だったことは、道の駅赤来高原では子どもたちにとっての自動運転サービスについて思いをめぐらせている点だ。

例えば、大人と異なる感覚で子どもたちはまちや乗り物を捉えていて、小さい子どもは遊園地の乗り物のような感覚で自動運転サービスを見ているようだと教えてくれた。

また、地元の小中高学生が、進んだ技術に触れられるいい機会だと考えている。「こんな田舎でも自動運転サービスができる。何もないところではないと感じてもらえることが嬉しかった。子どもたちはこの体験を機会に、最先端技術や車両に関する仕事に就く可能性もある。子どもたちが技術に触れて、もっとこうしたらいいのになどと考えてもらえるといいなと思う」と、木村さんは期待に胸を膨らませる。

道の駅「赤来高原」 島根県の南の玄関口、飯南町にある赤来高原は子育て世代に優しいアットホームな雰囲気の道の駅です。地元の食材を使った焼きたてのパンなどが人気。周辺にはりんご園やスキー場などもあり、観光拠点でもあります。
●所在地:島根県飯石郡飯南町下赤名880-3 ●営業時間9:00~18:00 ●定休日:毎週水曜日(GW等除く)

https://www.satoyamania.net/spot/2019/03/post-3.html/

https://www.michi-no-eki.jp/stations/views/19538/

楠田悦子
(Kusuda Etsuko)

モビリティジャーナリスト

心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。 自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』創刊編集長を経て、2013年に独立。「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」などの委員を歴任。近著に『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)などがある。