RoAD to the L4 自動運転レベル4等先進モビリティサービス
研究開発・社会実装プロジェクト

観光地での自動運転サービスの先行モデル「美浜シャトルカート」の乗車体験

2021年3月から、沖縄県中部の北谷町(ちゃたんちょう)の美浜アメリカンビレッジおよびフィッシャリーナでサービスをスタートした、「美浜シャトルカート」に乗車体験した。北谷町では実証実験を2017年度からはじめ、観光地での自動運転移動サービスの先行モデルとして注目されている。

アメリカ西海岸をイメージしたリゾートエリア

沖縄の中部にある北谷町は沖縄那覇空港から北谷エアポートエクスプレスで45分ほど。嘉手納基地などが近くにあり、アメリカと沖縄の文化が融合した地域だ。アメリカンビレッジは、アメリカ西海岸の雰囲気を再現したリゾート地区で、サンセットビーチ、ショッピングセンター、レストラン、リゾートホテルが立ち並び、まるで大型テーマパークのようなところだ。またフィシャリーナは船舶が停泊する大人の落ち着いたエリアだ。冬にはイルミネーションで飾られる。

路面に自動運転のマークや自動運転専用空間も

美浜シャトルカートは、公道コースと海沿いコースがあり、公道コースは毎日約10分毎に、海沿いコースは週末のみ運行していて、どちらも無料で乗ることができる。まちのコンセプトに合わせて作られたオシャレな停留所があちらこちらに置かれていて目につく。

公道コースは路面には、「AUTO」という赤い文字と自動運転車両のイラストを描いた黄色い四角いマークがたくさん路面に設置されている。一部区間には自動運転専用スペースが設けられていて、そのエリアでは自動運転モード(ハンズオフ)でスムーズに走行していた。

アメリカ西海岸をイメージしたリゾートエリアであるため、赤や黄色などカラフルな建物が隣接している。また、ホテルやDMO(観光地域づくり法人)が周遊用にトゥクトゥクも走らせている。スタンダードなゴルフカートでは目立たないことから、北谷町では専用にデコレーションされた自動運転車両を仕立てている。人目にもつきやすく、まちに馴染んでいて乗っていて楽しい。

美浜シャトルカートは北谷観光MaaSのラストマイルを担う

2017年度から検討が始まった北谷町の美浜アメリカンビレッジとフィッシャリーナの美浜シャトルカートは北谷観光MaaSと連携をはじめている。

北谷観光MaaSは全日本空輸(ANA)と連携し、那覇空港から北谷エアポートエクスプレスで北谷トランジットセンター(うみんちゅワーフ内)までアクセスし、ラストワンマイルを美浜シャトルカートが担うというもの。

北谷観光MaaSのトランジットセンターでは、電動のシェアカートもレンタルできる。普通運転免許を持っていれば、10分200円からレンタル可能だ。電動カートの貸し出しは全国的にみても珍しい。時速19kmまでしか出ないので安全に運転が楽しめる。解放感があり、景色や会話を楽しみながら乗れるので、家族連れやグループ旅行の周遊手段に最適だと感じた。

ヤマハとソニーが共同開発した自動運転車両

フィッシャリーナでは2021年12月から、ヤマハ発動機とソニーが開発したエンターテイメント自動運転車両「Sociable Cart SC-1」のテスト営業運行を行っている。電動カートと異なり、未来のあるデザインや車内ではMR技術を楽しむことができ、沖縄の地元の人しか知らない情報や北谷の海について詳しくなることができるなど、観光ガイドなどの役割をこの車両が担っている。

このように北谷町では、美浜シャトルカートのみならず、観光地の新しいモビリティサービスについて、模索が行われている。

持続可能な仕組みの必要性

2017年度から来訪者を乗せるサービスとして、自動運転の活用と向き合ってきた北谷町。観光地の先行モデルとして、一度は見ておきたい。

この地域の乗車体験やインタビューを通して、研究開発の域を越えて、あらためてビジネスとして成立するのかという観点から、車両開発、遠隔監視の仕組みの検討を進める必要があると感じた。

美浜シャトルカート

美浜シャトルカートは観光地モデルに相応しく車体をデコレーション
LiDAR、AIカメラなどを装備し、安全性を高めています
乗客向けのモニターには広告などを表示することで、運行費用の一部を補っています
1名の監視員が3台の美浜シャトルカートを遠隔操作する取り組みも行っています
バス停は認識しやすいようにデザインされ、まちに溶け込んでいます
美浜シャトルカート専用レーンもところどころに設置

アメリカンビレッジ内を走る公道コースは月〜金10:30~15:30、土・日10:30~21:00、約10分間隔で運行。海沿いコースは土・日13:00~18:00に運行しています。いずれも料金は無料。問い合わせ:北谷タウンマネジメント&モビリティサービス 合同会社 沖縄県中頭郡北谷町桑江130-1-301 TEL:098-926-1210

https://www.chatamobi.com/

北谷トランジットセンター

北谷エアポートエクスプレスの予約・運行状況に関する問い合わせは北谷トランジットセンターカウンター TEL:080-1754-9286(09:30~15:30)/那覇空港1Fカウンター TEL:080-1754-7229(9:30~15:00)

楠田悦子
(Kusuda Etsuko)

モビリティジャーナリスト

心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。 自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』創刊編集長を経て、2013年に独立。「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」などの委員を歴任。近著に『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)などがある。