RoAD to the L4 自動運転レベル4等先進モビリティサービス
研究開発・社会実装プロジェクト

北谷観光MaaSと連携する美浜シャトルカート

沖縄県中部の北谷町(ちゃたんちょう)の観光地、美浜アメリカンビレッジと北谷町フィッシャリーナで2021年3月から実装をはじめた美浜シャトルカート。北谷観光MaaSと連携している点も注目だ。美浜シャトルカートの運行を担う北谷タウンマネジメント&モビリティサービス合同会社で職務執行者社長を務める宮城匠氏に詳しく聞いた。

楠田 美浜アメリカンビレッジとフィッシャリーナはどのようなところですか? サンセットビーチ、リゾートホテル、ショッピングセンター、マリーナなどが立ち並ぶ、アメリカ西海岸を再現したテーマパークのようなエリアですね。

宮城 沖縄は海を連想される方が多いですが、実は街は海から遠い内陸部にあることが多く、片田舎のような地域も多いです。また、ビーチを囲むようにホテルが立地し、各ホテルが飲食店やエンターテイメントを提供するようなスタイルが一般的でした。美浜アメリカンビレッジと北谷町フィッシャリーナは沖縄のなかでも珍しく、飲食店、ショッピングセンター、ホテル、エンターテイメントなどを誘致し、エリアを一体的にリゾート地として開発しています。アメリカンビレッジは若い方向けで、フィッシャリーナは大人のリゾートライフをサポートするエリアです。

楠田 美浜シャトルカートを運行する北谷タウンマネジメント&モビリティサービス合同会社とは? 北谷観光MaaSとの関係は?

宮城 北谷タウンマネジメント&モビリティサービス合同会社は、当初ユーデック、那覇ハイヤー、デポアイランドの3社で立ち上げました。2021年11月には美ら島観光バスを運行する美ら島、ヤマハ発動機が加わりました。

設立の背景は、美浜アメリカンビレッジとフィッシャリーナは南北に長い観光地で、徒歩でまわるのは大変ですが、クルマを使用するほどでもない広さであることが北谷町の悩みで、無人自動運転移動サービスの実証実験と実装を検討し始めました。

私はユーデック沖縄北谷支店の支店長も務めています。弊社は北谷町からの委託を受けたまちづくりコンサルで、このエリアをどのようにするのか、どのような企業を誘致するかなどを長年手掛けてきました。

北谷観光MaaSは全日本空輸(ANA)と連携して、北谷エアポートエクスプレスでフィッシャリーナのトランジットセンターまで観光客の皆様にお越しいただき、ラストマイルの部分を、私たちが運行している美浜シャトルカートが担うという構想です。さらには、フィッシャリーナから離島への旅客船を出す計画もあります。

楠田 美浜シャトルカートはデコレーションされた車両が特徴的ですね。黄色いニコちゃんマークがたくさんついたものや、赤や緑のアメリカの西海岸を連想させるデザインの車両があります。

宮城 リゾートエリアなので、一般的な電動カートのデザインでは埋もれてしまいます。色気のある車両でなければお越しになる方に喜んでいただけないためです。

楠田 電動カートのレンタルもされていますね。観光地での活用が期待されています。

宮城 電動カートをレンタカーで貸出している地域はまだ少ないと思います。電動カートは軽自動車カテゴリーで、普通免許で乗ることができます。時速19kmしか出ず、指定したエリアを逸脱するとドライブレコーダーが知らせるようになっていて、美浜シャトルカートの運行エリアと同じエリアでご使用いただけます。自動運転とは別にまだまだ活用の余地があるように感じています。

楠田 ヤマハとソニーが共同開発したエンターテイメント自動運転車両「Sociable Cart SC-1」も走っているのですね。

宮城 2021年12月から営業運行を試験的に開始したところです。海沿いコースで乗車いただけます。片道1000円(大人)で、乗車中に沖縄の暮らしに触れたり、海について知ってもらえるコンテンツを楽しんでいただけます。

楠田 北谷町では2017年度以降、遠隔監視に取り組まれてきていますね。

宮城 民間で自動運転サービスを運営していくために、運行にかかる人件費を抑える仕組みを作っていきたいと思っています。そのためにも乗務員が運行している状況と同じ状況を、車両の挙動、乗客の乗降や乗車中、遠隔で監視している側でつくる必要があります。

楠田 今後の展望は?

宮城 新型コロナウイルスの緊急事態宣言中などでも、利用者は徐々に伸びていました。まだまだ周知が足りないと感じていて、まちの風景に美浜シャトルカートが馴染むまで、本当の需要はわからないと思っています。できるだけ多くの方に使っていただけるように工夫していきたいと考えています。

フィッシャリーナ地区の玄関口「うみんちゅワーフ」
うみんちゅワーフで電動シェアカートもレンタルできます
うみんちゅワーフ内に設置された「北谷トランジットセンター」
那覇空港との直行バス、北谷エアポートエクスプレスも運行を開始
Sociable Cart SC-1の営業運行も2021年12月から開始
うみんちゅワーフの目の前から美浜シャトルカートが出発

問い合わせ:北谷タウンマネジメント&モビリティサービス 沖縄県中頭郡北谷町桑江130-1-301 TEL:098-926-1210

https://www.chatamobi.com/

楠田悦子
(Kusuda Etsuko)

モビリティジャーナリスト

心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。 自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』創刊編集長を経て、2013年に独立。「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」などの委員を歴任。近著に『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)などがある。