RoAD to the L4 自動運転レベル4等先進モビリティサービス
研究開発・社会実装プロジェクト

「移動空間サービス実現へ」自動運転レベル4への期待 鉄道廃線跡地を活用した福井県永平寺町

鉄道廃線跡地の遊歩道を活用した、福井県永平寺町の自動運転サービス「ZEN drive(ゼンドライブ)」に試乗した。

永平寺町は福井県の北部に位置し、道元が開山した曹洞宗の大本山永平寺の門前町として知られ、雪深い地域だ。勝山盆地と福井平野の間を東から西へ流れる九頭竜川(くずりゅうがわ)に沿って街が形成されている。

永平寺町は、全国に先駆けて自動運転サービスをはじめ、自動運転が走りやすい空間が確保できており、遠隔で複数台を運行する実証実験が行われていることでも知られる。

実際どのように運用されているか、現地へ足を運ぶことで、新しい気づきがいくつかあった。

歩行者や自転車と混在する空間

永平寺町の自動運転サービスは、京福電気鉄道永平寺線の廃線跡地を活用している。その跡地は、自動運転の実証実験用に作られたのではなく、えちぜん鉄道永平寺口駅から永平寺まで続く、歩行者と自転車のための専用道路「永平寺参(まい)ろーど」として整備されていて、一般の車両は乗入れ禁止だが、自動運転車両は町長から認められ走行できている。

そのため、試乗中には散歩をしている住民の方、永平寺を目的地にランニングやサイクリングを楽しむ方とたくさんすれ違ったので驚いた。

この永平寺参ろーどの全6kmのうち荒谷〜志比の2kmの区間では自動運転レベル3で運行している。保安員の乗車のない遠隔型の無人自動走行をしていて、約20分に1本のダイヤで運行している。しかも、1人の遠隔監視者が3台を運行する体制を実現している。

“参ロード”には散歩やサイクリングを楽しむ方の姿も見られる

自動運転レベル3や4への期待

永平寺町は2017年から自動運転サービス導入に取り組んできた。長期にわたり前例のない自動運転サービスと向き合ってきたからこそ、浮上してきている課題もある。なぜ自動運転サービスを続けるのか、税金を使うのか、議会や住民へのしっかりとした説明だ。

現状ではZEN driveがデマンドタクシーよりも利便性では劣り、技術実証の役目を担うことが優先されることもあり、永平寺町は国にサービスモデルづくりを急いでほしいと要望している。また、自動運転レベル3や4になることで可能となりうる移動空間サービスの新たな価値提供にチャレンジしてみたいと考えている。

永平寺町で自動運転サービスの実証実験が長く続いている理由のひとつが住民の理解だ。京福電気鉄道永平寺線が元気だった頃は、年間約150万人の観光客が永平寺に訪れていたが、現在では50万人にも満たなくなっている。同じ輸送力があるわけではないが、中途半端な実証実験で終わらせずに、実を結ぶものにしてほしいと住民も願っているそうだ。

センサー類を改修・追加するなど車両の高度化が図られた車両を使用
LiDARやカメラを追加装備
自動運行装置を備えた車両(レベル3)として2021年3月5日に認可された
かつて鉄道が走っていた証が残されている
永平寺の自動走行は「ZEN drive」と名付けられた
1名の遠隔監視者によって、3台の運行を可能にしている

2022年4月1日からの運行は、【平日】定時運行なし(視察対応、教育活動、地域活動などの予約を受けて運行します)
【休日】荒谷停留所~志比停留所間を車内無人レベル3自動運転車両による運行となる
運行に関する問い合わせ:まちづくり株式会社ZENコネクト TEL0776-63-3900

https://e-machidukuri.co.jp/maas/autonomous/

楠田悦子
(Kusuda Etsuko)

モビリティジャーナリスト

心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。 自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』創刊編集長を経て、2013年に独立。「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」などの委員を歴任。近著に『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)などがある。