RoAD to the L4 自動運転レベル4等先進モビリティサービス
研究開発・社会実装プロジェクト

沿線の活性化をめざした四万十市とJR四国の取り組み

高知県四万十市とJR四国は2022年8 月 21 日から8 月 29 日の間に、ヤマハ発動機のランドカーと磁気マーカーを使った自動運転サービスの実証実験を行った。日本最後の清流と呼ばれる四万十川の川沿いをJR予土線が走っており、その利用促進と沿線の地域振興を図るためだ。

実証実験の区間は、JR江川崎駅からホテル星羅四万十の間だが、自動運転区間は試乗したJR江川崎駅と道の駅よって西土佐の間となる。

初代新幹線0系ラッピング車両が走る

自動運転サービスの起点となるJR江川崎駅には、キハ32形を初代新幹線0系風にラッピングした「鉄道ホビートレイン」が停車していた。中には模型の展示や郵便ポストがあり、鉄道ファン、子どものみならず、大人も楽しめる工夫が施されている。

道の駅よって西土佐では、自然豊かな四万十川で獲れる、天然のうなぎ、鮎、ツガニが販売されていた。名産の肉、野菜、イチゴや栗などの果物をランチやスイーツでも楽しめる。また、川遊び、自転車、バイクを楽しむ観光客で賑わっていた。

磁気マーカーを用いた自動運転システムの仕組み

この実証実験に使われている車両は、ヤマハ発動機のランドカーだ。電磁誘導線もしくは磁気マーカーを使って走るのだが、四万十の場合は、磁気マーカーを用いていた。

仕組みは、ランドカー底部に搭載されているセンサーで、磁石が車両のセンサーの真ん中からどれだけ離れたところで磁気マーカーを読んだかで、位置座標を出して車両の位置を特定する。

磁気マーカーに加えて、RFIDが道路に等間隔に埋設されている。磁気マーカーは500円硬貨ほどの大きさで、3cmほど掘ってマーカーを入れてふたをしているので、路面に黒い丸を発見することができる。RFIDタグは表面的にはどこに埋め込んであるか目視ではわからない。

磁気マーカーは、ただの磁石で情報を出しておらず、メンテナンスはほとんどいらない。RFIDタグは主にマーカーの番号を特定するために埋設されている。その他にも自動でハンドルの操作、加減速、 停止、方向指示器の制御などを行う。磁気マーカーとRFIDタグは水、積雪、道路の陥没もある程度なら耐えられるのだそうだ。

対向車や駐停車両の問題

JR江川崎駅を出発すると、ランドカーはRFIDタグまで手動で運転していた。RFIDタグを検知し、何個目の磁気マーカーか認識し車両位置を特定できるとランプが点灯し、自動運転が開始となる。対向車や駐停車両がなければ、磁気マーカーに沿ってスムーズに走行できるが、障害物などを避けると磁気マーカーから遠ざかるので、手動で運転する必要がある。再び、RFIDタグを読むと自動運転を開始できる。

障害物を避けて、RFIDタグと磁気マーカーを検知するまでを自動化するのが当面の課題だろう。磁気マーカー、GPS、LiDARを組み合せて使ったり、高齢ドライバーなどの運転ストレスを軽減する自動運転レベル2の使い方で普及を進めるのもひとつの手だろう。

自動運転サービスが二次交通としてJR四国などの鉄道の利用者増や地域の活性化に貢献するよう、技術やサービスが早期に確立できればと感じた。

楠田悦子
(Kusuda Etsuko)

モビリティジャーナリスト

心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。 自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』創刊編集長を経て、2013年に独立。「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」などの委員を歴任。近著に『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)などがある。